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LIFESTYLE

幻冬舎「Movilist」編集長山崎二郎氏 単独インタビュー

2017.05.22

誰もが日常的に繰り返す“移動”という行為。そこは、人生において大事な「気づき」を得るための、創造的な空間だった

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1950年代、本を携え、アメリカで移動し、創作したビートニクス

2010年代、小型コンピュータを携え、世界を移動するムーヴィリスト

ON THE ROAD AGAIN!!

同じ想いを持った「個」

そんなTouristではない旅の達人をMOVILISTと呼びたい

Movilist, Winter 2015より抜粋)

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今いる空間から、どこか違う空間へ。みなさんは、電車や車、飛行機を使って移動をするときに、どのような時間を過ごしていますか?

 

読書や音楽観賞、オンラインゲーム、仕事のメール確認や書類の整理から、とにかく仮眠をするといったことまで、移動時間の過ごし方は人それぞれあると思います。

 

格安航空や快適な長距離バスが台頭してくるなど、移動の手段が多様化してきたことに加え、モバイル端末やネット環境の普及により、どこでも仕事に取り組める環境が整ってきました。

 

以前にも増して、移動の機会が多くなったと感じる人も少なくないのではないでしょうか。

 

それでも、利便性や快適性が高まったとはいえ、物理的な移動にはそれなりの時間と労力を要するもの。

 

なるべく時短化を図ったり、効率的な動きを心がけたりするのは当然なことと言えるのかもしれません。

 

そんな日常の風景のなかに当たり前のように溶け込んでいる移動という行為や時間、そして空間。いま、この“移動”のあり方を見つめ直してみようという動きが俄に注目を集めているのをご存知ですか。

 

 

“移動者”から“移動主義者”へ

 

25年前に、カルチャーマガジンの先駆けともいえる「BARFOUT!(バァフアウト!)」を創刊し、その後も編集長としてさまざまなカルチャーシーンの最前線で活躍する山崎二郎さん(以下、山崎さん)が、2年前に満を持して創刊したのが「Movilist(ムーヴィリスト)」。

移動主義者という哲学・ライフスタイルを提案する雑誌です。

 

移動主義という哲学・ライフスタイルを提唱する「Movilist」

 

“移動主義者=ムーヴィリスト”

 

初めてこの言葉と出会った人のなかには、なんとも聞き慣れない表現であると感じた方も少なくないのではないでしょうか?それもそのはず。山崎さんが考えた造語です。

 

私たちが日常的に繰り返している“移動”という行為。通勤通学の時間も、国内や海外への旅行もまた然り。敷居をまたいだ瞬間から、誰もが移動者となります。

 

では、“主義”という言葉を付け足した理由はどこにあるのでしょうか。山崎さんは次ぎのように話します。

 

“ノマドワークや二拠点生活といった暮らしの実践者たちは、移動というものに”人はもっと自由になれる”という根源的な意味を見出していました。

 

それが、いつの間にかマーケティング目的で使われるようになったり、ノマドワーク=都内のお洒落なカフェを移動するようなスタイルに矮小化されたりと、一般化されてきたように感じています”

 

「Movilist」の編集長・山崎二郎さん

 

移動主義者とは、スピリットや哲学といったものを内包した考え方を持っている人のことであり、精神的なものであると山崎さんは指摘しています。

 

一種の流行に便乗した生き方ではない、個としてのブレない軸を持った人のライフスタイル。

 

実際に、本の中でも、クリエイティブな領域で活躍するムーヴィリストたちが、移動を繰り返し、試行錯誤の過程で人間の本質的な生き方に触れる体験や、自身のなかに宿る創造的な部分と向き合う時空間として、移動を捉えている様子などが綴られています。

 

 

しなやかな発想力を持った「個」として生きていく

 

佐野さんをはじめ、多くのムーヴィリストたちとの対談を満載した充実過ぎる内容!

 

山崎さんの考える移動主義者=ムーヴィリストというコンセプトの源流は、彼が10代の頃まで遡ります。

 

そこには、ロックミュージシャンの佐野元春さん(以下、佐野さん)の存在が強く影響していました。

 

“今ほど技術が発達していない80年代に、創作の場所を東京からニューヨークへと移し、現地の人との関係性をゼロから構築しながらクリエイティブする姿勢。

 

その過程で得た経験の成果をアルバムという形で提示したライフスタイルに強く魅了されました。

 

ひとつの場所に定住するよりも、移動を伴った暮らしの方が単純に楽しいのではないかといった感覚です”

 

とはいっても、日本人の間ではなかなか現実的なライフスタイルとして定着してこなかった「流動性のある暮らし」。

 

今でこそ、モバイル端末の発達や移動手段の多様化を追い風に、パソコンを片手に移動を繰り返す“フリーランス”や“ノマド”というワークスタイルが、注目されるようになってきました。

 

とはいえ、まだまだ働く場所や働き方の部分に焦点があてられがちで、移動という時間のなかのクリエイティブにもっと注目が集まってもいいような気もします。

 

移動を繰り返すことは、「自分の考え方やライフスタイルを見つめ直し、それらをアップデートしていく行為でもある」と山崎さんは言います。

 

これまでのしがらみや固定観念を精算し、物質的・精神的に身軽になって自分と向き合うための時間を創り出していくこと。

 

そうすることで、時代の変化に柔軟に対応しうる、しなやかな発想をまとった「個」を確立できるのかもしれません。

 

“自分がどこにいてもブレないことを確認する。これが移動する人の本質ではないかと思う”

 

と佐野さん。

 

“何かクリエイティブなものを作ろうとしたら、そこから突き抜けないといけないと思うんです”

 

と作曲家/ギタリストの笹久保伸さんは、「MOVILIST」のなかで語っています。

 

大人としてのバランス感覚を

 

 

簡単そうに見えて、なにかと難しい流動性のある暮らし。

 

しかし、そのような環境に身を投じれば投じるほど、大人としての成熟度が増していくことを、山崎さんとの対談を通して感じました。

 

移動を伴う暮らしを通して、「個」のあり方を見直していくことを勧める一方で、山崎さんは「自分の軸を持ちつつ、社会とのつながりを意識することも大切」と指摘します。

 

個性と社会性とのバランス感覚を磨き、その双方を行き来するのも、ムーヴィリストと呼ばれる人たちが自然と実践してきたことなのだとか。

 

これまでの活動圏の外へ頻繁に繰り出し、常識や価値観が大きく揺さぶられる衝撃を幾つも味わい、その都度、「社会における自分のあり方」を見直していくこと。

 

そういった行為の積み重ねのなかにこそ、大人としてのバランス感覚を養っていくためのヒントが隠されているのかもしれません。

 

 

今日からあなたも、ムーヴィリスト

山崎さんのいう移動主義者とは、なにも、バックパックを背負い世界各地を放浪する旅人や、表現活動を生業とするアーティストやクリエイターたちのことを言っているわけではありません。

 

ビジネスマンや学生、主婦(夫)、束の間の休暇を利用して国内ツアーに参加する旅行者だって、移動主義者になることは可能なのです。

 

大切なのは、移動という行為・時間・空間(場)のなかで自発的に自分自身と、そして世の中と向き合う姿勢。自らの足を使ってリアルな情報に触れ、情緒を味わい、感性を磨いていくこと。

 

“今の世の中、無駄な時間を埋めようとする方へ意識が向けられがちですが、必然的に自分と向き合うための創造的な時間も必要です。

 

移動中に突拍子もないアイデアが生まれたり、大切なことに気付いたりする経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

 

そこで得たものを普段の生活へと還元していくことができればいいですよね”

 

さあ、どこかピンと来た方。そろそろ、人生において大事な「気づき」を得る旅へと踏み出してみてはいかがですか。

 

今日からひとりのムーヴィリストとして―—

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