自転車通勤可能な距離と時間は?
自転車通勤を考えている人がしばしばぶち当たるのが、「通勤可能な距離ってどのくらいまで?」、「どのくらい時間がかかるの?」といった疑問でしょう。
もちろん、「人それぞれ」としか答えようのない疑問です。
体力や乗っている自転車、あるいは道路状況や必要になる荷物の量など、さまざまな変数が絡んでくるためです。
しかし、ある程度のことは一般論として語ることができます。
10kmくらいは走りたい
週末のツーリングやトレーニングならば別ですが、通勤手段として自転車を考えるならば、際限なく長く乗っていることはできません。
あまり時間がかかるようだと家を出る時間を早めなくてはいけませんし、帰宅も遅くなってしまいます。
また、長距離を短時間で無理に走ろうとするなら、体力を浪費して仕事どころではなくなるでしょう。
しばしば耳にする経験則として、片道10kmから15kmくらいの距離が自転車通勤には向いているという考え方があります。
もちろん10kmより近い場合でも通勤可能ですが、あまり短いと、自転車を楽しむまでもなく職場についてしまってつまらない。
もし運動や気分転換といった効果を求めて自転車通勤を考えるのであれば、やはり10km程度は乗った方が満足できるのではないでしょうか。
経験のない人が片道10km、往復で20kmと聞くと、大変な距離だと感じるようです。
しかし、10kmを自転車で走る場合、スポーツ自転車であれば30分+信号待ちの停車時間程度、ママチャリでも40分少々あれば無理なく走れるでしょう。時間的な開きが少ないのは、信号や道路状況によって制約を受けるため、ママチャリだろうがスポーツ自転車だろうが平均速度にそこまで極端な差は生じないため。
ただし、全身の力を活かして走るスポーツ自転車であれば大した疲れにならないでしょうが、ママチャリだと脚に負荷が集中するので10kmでも結構くたびれてしまうかもしれません。
30分走れば、朝ならば目覚めの効果は十分です。帰宅の際には、職場でのストレスをいくらか発散する効果も期待できます。
さらに軽い運動にもなるでしょうが、しかし体を鍛えるというほどの負荷にはならないでしょう。これは、裏を返せれば仕事に差し障るほどの負担ではないということになります。
片道10kmというのは、未経験者が考えるよりもずっと楽なものです。
スピードは?
しかし片道10kmを30分で走る際、どの程度のスピードが出るものでしょうか。
自転車にはスピードメーターの着用は義務付けられていませんが、スポーツ自転車に乗る人の多くはサイクルコンピューターと呼ばれる機器を付けて速度などを表示し、また走行記録を取ったりしています。
多くのサイクルコンピューターには、信号待ちの停車時間を除いて走行時間と平均速度を出す機能が備わっています。
もし信号待ちの時間を無視して単純計算すると、片道10kmを30分で走るなら平均速度は時速20kmということになります。
脚力や道路事情にもよりますが、この速度が都市部を通勤で安全に走る場合の一つの目安になるのではないでしょうか。
ちなみに、平均速度と、特に邪魔するもののない道を気分よく巡行する際の平均的な速度は異なります。
赤信号があれば減速して停車し、青になってから再加速する必要が生じます。
また急なカーブにさしかかったり、自動車や他の自転車、歩行者とすれ違ったりする際にも減速と再加速をしなくてはいけません。
高い速度で巡行していても、そうした減速と再加速のたびに平均速度は下がっていくものなのです。
もし、何も邪魔するもののない直線道路を気分よく走っている時の速度がおしなべて時速25kmくらいであれば、平均速度は20km前後になるでしょう。
道が混んでいたり、信号に頻繁にひっかかったりすると、さらに平均速度は下がって時速17~19km程度になります。
邪魔のない状態でだいたい時速30km程度で巡行していたとしても、平均時速では22kmから23km程度にしかならないことが多いです。
都市部で平均時速25kmというのは、なかなか出せるものではありません。
それほど大きな差が生まれないのであれば、疲労と安全を考えて平均時速20kmくらいを目安にする方が賢明でしょう。
繰り返しになりますが、その場合は10kmで30分+信号待ちの停車時間が所要時間です。
さらにパンクした際の修理時間や着替えの時間などを考えると、始業の1時間ちょっと前に出発すればいいことになります。
これならば大した負担ではないでしょう。
距離が長い場合は?
同じ条件で計算すると、片道15kmならば45分程度、パンクへの備えや着替えを考えても1時間30分くらい前に出発すればいいことになります。まだまだ大したことはありませんね。
電車の場合でも、家から駅まで、あるいは駅から職場まで歩く時間が必要ですし、乗り換えがあれば乗り換え時間もかかります。
さらに通勤時間帯は遅延のリスクも大きなものです。自転車の方が電車より早いケースも多く見られます。
片道15kmを超える距離の場合はどうでしょうか。個人差はあるでしょうが、20km程度までであれば多くの人にとって自転車通勤は可能でしょう。
しかし片道20kmを超える場合には、人によりけりかもしれません。20kmを超えるということは1時間以上走るということになります。
週末にロングライドに繰り出すような人であれば何ということもありませんが、通勤以外には自転車は乗らないという人にとっては多少しんどい距離になります。
また1時間以上かかる場合、天気の変化を受けやすくなるということも考慮に入れる必要があります。
特に梅雨時から夏にかけては、出発時に晴れていても途中で豪雨に遭う可能性が高まります。そうした条件を考えると、片道1時間を超える場合には多少の慣れや体の準備が必要だと考えられます。
また、夏場は汗がすごくなりますし、熱中症の恐れもありますから、途中に休憩できるような場所を見付けておく必要があるでしょう。
駐車場の広いコンビニでもあると理想的ですね。
いつも走る必要はない
そもそも、毎日自転車で通う必要はありません。天気のいい日に時々自転車通勤をするという選択肢はあるでしょう。
職場に、あるいは職場の近くに自転車を安全に置いておける場所があるならば、片道だけ自転車を利用し、帰路は電車という方法も考えられます。
翌日は電車で出勤し、自転車で帰宅すればよいのです。実際、自転車で通勤しても、外せない飲み会が急に入ってしまったために、帰りは電車にせざるをえないということは頻繁に起こります。
言うまでもなく、自転車の飲酒運転は厳禁です。
通勤は日々のことですから、無理をしないことが大切です。
自転車通勤の距離と時間についても、無理なく安全にこなせる範囲で考えるのが一番大切なことでしょう。
その上で、多少距離があっても、気の向いた時や荷物の少ない時に限って乗るといった選択肢は有効です。
たまに自転車で通ってみると、いつもの街が違う表情を見せたり、あるいは道端の自然から季節の移り変わりを感じたりすることができて楽しいですよ。